考え方の癖を変える方法
同じことが起こっているのに、人によって受け止め方や反応というのは全く違っていたりします。
例えば、マナーの悪い人を見て、
「なんだあの人、マナーが悪いな(怒)」
と思う人もいれば・・・
「あんな人もいるんだ・・・、笑っちゃうね(笑)」
・・・という風に考える人もいます。
そういう考え方というか感じ方というのは人それぞれで、何かの出来事や他人の特定の行為に対して、怒りを感じる人もいれば、軽く流せる人もいます。
その違いは「考え方の癖」なのかも知れません。
考え方がまずあって、その次に感情がやってくる。
そんな順番です。
だから、この「考え方」を少しでも変えることができると、「感情」の部分は自然と、変わってくることがあります。
今回は自分の(自分を苦しめる)「考え方の癖」を見つけて、そして、その考え方の癖を変える方法についてご紹介させていただきたいと思います。
目次
自分の考え方のパターンに気づく。10個の考え方の癖とは?
人にはそれぞれ考え方の癖やパターンといったものがあって、あることが起きた時にどのように考えるかということがある程度決まっているようです。
感情というのは、その「どのように考えたか」という思考が生み出すものだとすれば、「怒り」や「悲しみ」「苦しみ」といった感情は、その「どのように考えるか」という思考を変えてしまうことで、変わってくることになります。
この考え方の癖は色々あるのですが、専門用語だと「認知の歪み」などと言われることがあります。
それらは大きくわけると10個に分類できます。下記はデビッド・バーンズという方が見つけ出した10種類の「認知の歪み」です。
1つ1つご紹介してゆきますが、この中に自分に当てはまるものがあるかどうか探してみて、もし当てはまるものがあれば、その傾向・パターンを知っておくことが考え方の癖を変える第一歩になると思います。
また、考え方の癖はいくつもある場合も多く、1つだけではないかも知れません。2つ、3つと当てはまる項目がある場合もあるかも知れません。
考え方の癖を変える方法は最後でご紹介するとして、まずは、10個の考え方の癖について、見てゆきたいと思います。
1. 全か無か思考「all-or-nothing thinking」
「白か黒か」という考え方です。
簡単に説明すると、例えば、「レギュラーになれないなら、野球をやる意味がない」とか、1つの仕事に失敗して、「自分はこの職業には向いていない」と思ったり。
1つダメなことがあると、全てダメだと感じたり。そういう完璧を求める考え方の癖、物事に白黒をつけたがる考え方の癖です。
2.一般化のしすぎ「overgeneralization」
一度嫌なことが起こると、また同じことが起こると考えてしまう考え方の癖です。
例えば、一度、人間関係で苦しんだ経験があると、また違うグループに行っても「うまくいかないに決まっている」と思ってしまうのもこの考え方の癖の1つです。
「また起こるのではないか」
・・と考えてしまうことは誰にでもありますが、それをどのようなことに対しても考えてしまう癖があると、それが原因で苦しんでしまうこともあるかも知れません。
3.心のフィルター「mental filter」
1つ良くないことがあるとすべてがマイナスのように思ってしまう考え方の癖です。
1つの仕事に失敗したからといって、「自分はダメだ」とすべてマイナスに考えてしまったりするのもこの考え方の癖の1つです。
4. マイナス化思考「disqualifying the positive」
良いことも悪いこともマイナスに受け取ってしまう癖です。
良いことがあっても、「これはまぐれにすぎない。この後にきっと悪いことが起こる」という風に考えてしまうのもそうですね。
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5. 結論の飛躍「jumping to conclusions」
思い込みで否定的な結論を出してしまうことです。
例えば、「あの人は笑っていたけど、きっと私をバカにしているに違いない」・・というのもそうです。
6.拡大解釈と過小評価「magnification and minimization」
悪いことは大袈裟に捉え、良いことについてはそれほど評価をしない・・・という考え方です。
小さなことで悩んでしまうのは、この考え方の癖が1つの原因かも知れません。
良いことも沢山あるのにそれを評価せず、悪いことばかり大袈裟に捉えてしまう・・・というのも1つの考え方の癖ということになると思います。
7.感情的決めつけ「emotional reasoning」
自分の感情がすべて真実のように受け取ってしまう考え方です。
例えば、ATMを一人でずっと独占している人に苛立ってしまい、「人のことを考えられない人なんだな」と決めつけてしまったり。
その後、その使っている人がおじいちゃんで「操作方法がわからなくて、お待たせしてすみませんでした」と言われ、自分が相手を決めつけていたことに気づいて、自己嫌悪に陥る。
それは「感情的決めつけ」という歪んだ考え方がそもそもの原因だったのかも知れません。
この考え方の癖がある時は、論理的に考えるようにすることで、感情に振り回されることが減ってゆくことがあります。
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8.すべき思考「should statements」
「~べき」という考え方です。
思い込みの1つでもあります。
「挨拶はするべき」という考え方の癖があると、挨拶しない人に腹を立ててしまいます。
でも、「挨拶はできない時もある」という風に考える癖のある人だと挨拶しない人に対してもイライラすることがありません。
9.レッテル貼り「labeling and mislabeling」
人や自分にレッテルを貼ってしまう考え方の癖です。
例えば、「仕事ができない人がいい夫になれるはずはない」とか、「あの人は車を駐車するのが雑だから、他人のことを思いやれない人に違いない」とか。
1つのことでその人そのものを判断してしまう・・という癖です。
この考え方を癖にしていると、他人の欠点を1つ見つけると、その人のすべてが嫌いになってしまったりするかも知れません。
10.個人化「personalization」
自分のせいだ・・・と考えてしまう癖です。
その逆が、「あの人のせいだ」という考え方。どちらも考え方の癖で、嫌な気分を引き起こすことがあるかも知れません。
考え方の癖を直すには?
考え方の癖を直すには、自分の考え方の癖がどれなのかをまず把握することが大切なのかも知れません。
冒頭でも書かせていただきましたが、考え方の癖も上記のどれか1つではなく、複数に当てはまる場合もあると思います。
自分にはどのような思考パターンがあるのだろうと探すのはとても大変だと感じてしまうこともあるかも知れませんが、実はこれは意外と簡単です。
やり方は簡単で、嫌な気分になった直前に自分が何を考えたか・・というのを探るだけです。
感情は思考の後にやってきますから、例えば、イライラした直前には「何かしら考えていた」ことになります。
その時に例えば、「~べきだろう」と考えていたとしたらそれは・・・
「え~と、8の「すべき思考」のパターンだな」
という風に。そうやって、自分の考え方のパターンを探ってゆきます。
そして、自分がよくやってしまっている考え方のパターンに気づいたら、例えば、上記の「~べき」という思考に気づいたら、その考え方に少しだけ柔軟性を持たせてあげます。
「~するべき」というのは、それ以外を許さない考え方ですから、それに少し柔軟性を持たせて、「~したらいいけど、そうでないこともある」という風に考えるようにすると、嫌な感情が後からついてこなくなります。
これも練習が必要ということにはなると思います。
次は、もう少し具体的に、自分の考え方の癖を変える方法について見てゆきたいと思います。
「反応を決めておく」というテクニック
自分の考え方の癖を変えるためにできることの1つが、「反応を決めておく」という方法です。
例えば、本屋さんで子供の叫び声とか泣き声を聞く度にイライラしていたとします。
イライラは感情ですから、その前には必ず思考があるはずです。
例えば、「本屋では静かにするべきだろう」(すべき思考)とか、「子供を注意できない母親は親として失格」(レッテル貼り)などと考えたとします。
この2つは上記の「認知の歪み」に当てはまります。
「認知の歪み」というのは、嫌な気分を呼んでくる考え方の癖でもあります。
さて、この時ですが、1つのテクニックが反応を決めておく・・・ということです。
本屋で子供の泣き声
↓
「本屋では静かにするべきだろう」(すべき思考)
「子供を注意できない母親は親として失格」(レッテル貼り)
↓
イライラ・・・イライラ・・・
というのが考え方のパターンだとしたら、真ん中の考え方の部分(反応の部分)をあらかじめ自分で決めておきます。
つまり、本屋で子供の泣き声が聞えたら「こうしよう」というのを考えておきます。
この場合は例えば、
本屋で子供の泣き声
↓
「自分も子供の頃はああやって迷惑をかけたんだろうな」
という風に考えることを予め自分で決めておきます。
勿論、毎回うまくいくとは限りません。
長年、自分と一緒にあった考え方の癖ですから・・変えるのには時間がかかります。
ただ、例えば、上記のことをうまく実践できた時は不思議と子供の泣き声が聞えても「イライラ」という感情がやってこないことに気づきます。
もう1つ、今度は違うケースで考えてみたいと思います。
例えば、誰かに何かを言われて、「この人は自分のことを嫌いなのかな」と思ったとします。
1つのことだけでその人そのものを判断してしまう、思い込みで否定的な結論を出してしまう。
これは10個ある考え方の癖の中の「レッテル貼り」や「結論の飛躍」などに当たります。
その言葉や言い方、声のトーンなどを重く受け止め過ぎてしまったり、その言葉だけで相手を判断してしまう。
「あんな風に言ったんだから、わたしのことが嫌いに違いない」という風に。
この考え方の癖があると、ささいなことで落ち込んでしまいやすくなるかも知れません。
それが自分の考え方の癖であると気づいたら、先程ご紹介したように、次回、そのような場面になった時にどう反応するか、ということを決めておきます。
例えば、この場合だと、「この人は自分のことを嫌いなのかな」と思う代わりに・・・
「その人がそれまで自分にしてくれたことを考えるようにしよう」
例えば、そんな風に決めておきます。
次回、何かその人の言葉や行動を否定的にとりそうになった時は、その決めておいたことを実践します。
すると、違った感情が自分の中で湧き上がってくることに気づいたりします。
「自分のことを嫌いなのかも知れない」と思う代わりに、「今、疲れてるのかな・・」と思ったり。
考え方(受け取り方)を変えることでその後に続く感情が確実に変わってゆきます。
そうやって1つ1つ自分の考え方のパターンを見つけて、それを変えてゆくと、どんどん気持ちが楽になってゆくことがあります。
尚、すぐ不安になる。不安になりやすい原因と自分の中にある考え方の癖でもここでご紹介したいくつかの考え方の癖の直し方について具体的にご紹介しています。
考え方は「ゆっくり」変わってゆく
さて、ここまで考え方には癖、パターンがあるということ、そして、その考え方の癖を見つける方法や、見つけた後にできることについてご紹介してきました。
こういったことを実践してみると、「あれ?今までの自分とは違う、気分が違う・・・」と感じることがあります。
すると、自分は変われたんだと思って嬉しくなったりします。
ところが、変わることができたと思っていたのに、それなのに、また同じようなことで悩んでしまったりすることがあります。
そんな時は、結局変われなかったと、そう思って諦めてしまうこともあるかも知れません。
でもそこでダメだった、自分は変われなかったと思う必要は本当はないのかも知れません。
というのも、考え方はゆっくり変わってゆくものだからです。
反応を決めておこう、そうなったらこう考えてみようと思って、それを何度も何度も繰り返し実践してゆくと、ある瞬間から、その反応が自動運転に切り替わるような時が来たりします。
それはすごく不思議な瞬間で、「あれ?こんな時、悩んでたんじゃ・・」とか、「こんな時、ため息をついていたんじゃ・・」とか、もうその特定のことが悩みではなくなる瞬間、もうそんなことで悩まない自分になった瞬間というか。
それは突然のようにやってくるものだったりします。
でも、本当は実践している間に少しづつ少しづつ自分の考え方の癖というものは変わっていっているものなのかも知れません。
自分で気づくのはかなり後になってからだけど、本当は実践をはじめようと思って続けているうちに自分は少しづつ変わってゆくものなのかも知れません。
僕はそうやって考え方や捉え方を変えてゆこうとすることを自分の中で勝手に「捉え方道」と呼んでいます。
性格を変えることはできるか?考え方、捉え方を変える「捉え方道」でも書かせていただきましたが、考え方を変えるのはとても時間のかかることだと思います。
考えてみれば、それまで何年、何十年と繰り返してきたことをすぐに変えられたりするはずもありません。
「オレ、明日から全く違う人になるね!」
・・なんて言って、本当に全く違う人になったら、それはそれで周りも困ってしまいますから・・
考え方というのは、変えようと思って実践し続けてゆくことが何よりも大事なことだと思います。
自分で考え方が変わったとはっきりと認識できるようになるには、ある程度の時間がかかるかも知れません。
僕自身は3年は必要だと思っています。完全に変えるには。
ただ、実践を続けてゆくうちに自分でも気づかないうちに、少しづつ変わってゆくものだと思います。
例えば、以前は10回やって1回もできなかったことが、10回やって1回できるようになったりする。
だから、最初はうまくいかなくても、諦める必要はないと思うのです。
勿論、自分の考え方すべてを変えることはできないかも知れません。
変えられないものもあるし、僕はそれはそれでいいと思うんですね。
だけど、変えられるものもあります。
もっとも、自分の考え方を変えることは大変なことでもあります。
大変なことではあるけれど、それによって心の自由が手に入ることも、あります。